AIが決めた恋
「くそっ…。」

この、どうしようもないくらい絶望に満ちた感情を抑えられず、俺は近くの壁を殴る。
今週の映画を観に行く約束だって、本当は俺とじゃなくて、佐倉と行きたかったはずだ。
余計なこと、するんじゃなかった。

「痛…。」

壁に叩きつけた拳が、じんと痛む。同時に激しい頭痛も襲ってきて、何故か胸の奥底までも、痛いような気がした。
俺は、頭を抑えて、靴を履くと、歩き出した。
こんな悪意のある封筒の中身など、見なければ良かった。
誰がこんなことをしたのだろう。
考えてみても、悪意のありそうな奴は1人しかいない。
影石愛。
でも、あいつは文化祭の日、まだこの高校に転校してきていなかった。手紙を置くことはできても、写真を撮ることは不可能だ。
だとしたら、一体誰がこの写真を…?
いや、今はそんなことを深く冷静に考えられるような精神状態ではない。
ただただ、写真に写っている事実を受け止めることが辛くて、彼女や佐倉が俺に、そういう関係になっていることを言ってくれなかったことも悲しくて…、そして、何よりも、自分が惨めに感じる。
俺は、彼女と佐倉の仲を引き裂く、邪魔者でしか無かった。
でも、それでも尚、彼女を諦めたくないと感じている自分も何処かにいる。それが嫌だった。
もう、何もかも全て諦めてしまいたい。
諦めて受け入れれば、こんな葛藤、しなくて済むのだろうか…。
< 426 / 508 >

この作品をシェア

pagetop