AIが決めた恋
「奏汰くんおはよう!ごめんね、待った?」
「ううん、今来たところだよ。」

そんな台詞、何処かの恋愛漫画でしか言わないと思っていたから、実際に言う人がいたことに驚きだ。

「真島くん、おはようございます。」

彼女が、俺から少し目を逸らしながら言った。
いつもと何も変わらない。彼女は俺と話す時、いつも少しだけ目を逸らしている。人と話すのがあまり得意ではないからだろう。

「おはよ。」

今日の彼女は、薄いピンク色のブラウスに、爽やかな白いスカートを履いている。いつもの制服とは違ったその姿に、目を奪われた。

「あ…、やっぱりスカートは、似合わなかったですよね…。」

俺の視線に気づいたのか、彼女が口を濁しながらそう言った。

「これ、この前お兄ちゃんが買ってくれたのですが、今日、履いていけとうるさくて。」

裕さんが買ったのか…?
裕さんは、彼女に従兄以上の感情を抱いているはずなのに、他の男のデートに自分の買った服を着せていかせて良いのだろうか。
…いや、裕さんのことだ。自分がプレゼントしたスカートを彼女が履いているという事実を俺に突きつけたいのかもしれない。

「そんなこと、ない。」
「えっ?」
「俺は、良いと思う。」

俺がそう言うと、彼女は拍子抜けしたような表情をした。
この表情はたまに見る。例えば、初めて見たのは、遠足の帰り道だ。俺が一緒にゴールすると言ったら、とても驚いていた。
何だよ、俺はそんなに非情な奴だと思われているということか?
これを言ったのが佐倉だったら、君は、どんな表情をするのだろう。

「じゃあ、早速映画館にレッツゴー!」

水原が楽しそうに叫ぶ。その声を聞き、こんな感情をもっては駄目だと我に返った。
今日だけは楽しむのだと、水原と約束をしたから。
< 430 / 508 >

この作品をシェア

pagetop