AIが決めた恋
「今日は、誘ってくださって、ありがとうございます。」

歩きながら、彼女が言った。
桃野と水原は少し前を歩いている。

「嬉しかったです。」
「本当か…?」
「本当です。」

『嬉しい』か。
一緒に行くのが俺でも、そう言ってくれるなら、それだけで少しだけ救われたような気持ちになる。

「真島くん、今ちょっと笑いましたか?」
「笑ってなんてない。」

全く。目を逸らして話しているというのに、そういう所だけは気がつくのだから困る。
俺に笑顔なんて似合わない。
そんなもの、中学を卒業すると同時に封印したはずだ。

「そうですか。でも、元気そうで良かったです。」

その言葉に違和感を覚えた。

「どうして、そんなことを言うんだ?まるで俺が最近、体調を崩したみたいじゃないか。」
「あ、ごめんなさい。深い意味はないのです。」

何かを誤魔化すように、彼女は再び俺から目を逸らした。
おかしい。彼女は何が言いたかったのだろう。
わざわざ、『元気そう』だと言うのは、きっと、それより前に、元気で無さそうに見えていたからだ。
俺は、気付かぬうちに、元気が無さそうな態度を取っていたのだろうか。
心当たりがあるとすれば──
きっと、あの写真が原因だ。
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