AIが決めた恋
この映画の主人公と同じだ。俺は確実に彼女と関わったことで、変わろうてしている…。変化など、望んでいないはずなのに。ずっと寂しいままで良いと思っていたのに。
月に一度の顔合わせを行う度に、俺は確実に彼女に興味を持っていった。もう少し一緒にいたいと望んでしまった…。
そっと、彼女の顔を盗み見る。
その瞬間、自分でも驚くくらい、心臓が高なった。
でも、それを認めたくなくて、俺は再びスクリーンに目を向ける。
あまり熱心に感情移入をしてもいられない。刻一刻と、クライマックスは直ぐそこに迫ってきているのだ。

「もう、嫌なんだよ!」

スクリーンの中の彼が、目の前にいる少女に向かってそう叫んだ。

「お前と出会ってから、俺の心は滅茶苦茶だ!俺は、感情なんていらない。これからも、ずっとこのままで何にも絶望せずに生きていく。だからもう、俺に構うなよ!」
「構うよ!これからも。ずっと構うから!」
「どうして──」
「貴方が好きだから!大好きだから。再び感情を取り戻して欲しいから!」

少女がそう叫ぶと、少年はその場に崩れ落ちた。
両手を地面につき、震えながら下を向いている。きっと、泣いているのだろう。
そして、それを少女が優しく抱きしめた。

「これからまた絶望することがあっても、それは2人で乗り越えて行けばいい。私は、貴方と幸せを感じたい。ずっと傍にいたい。」

少女の言葉に、少年が顔を上げると、2人の視線が合った。
ラストのキスシーンが、来る…。
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