AIが決めた恋
「そうか。」

胸が痛い。この話は、無闇に他人には話したくなかった。佐倉くんも覚えていないようだったから、そのまま無かったことにするつもりだったのに…。

「で?」

全てを話終わった後、先生が私に言った。

「『で?』と言われても…。話はそれで終わりです。」
「そうじゃない。誰に嵌(は)められたんだ?」
「え…。」
「何だ。随分と意外そうな表情をするじゃないか。」

それはそうだ。私にとって先生は、今でも“敵”なのだから。

「…怒られると思っていたので。」

私がそう言うと、先生は鼻で笑った。

「君達2人の言うことが嘘だとは思えないからな。湖川はどちらかというと被害者じゃないか?」
「被害者…?」
「佐倉に無理矢理キスされたということだろ?」

その考えは、今まで一瞬足りとも考えたことがなくて驚いた。
確かに、そう捉えようと思えば、そうも捉えられる。でも、その解釈は完全ではない。私はあの時、佐倉くんを突き飛ばすことだってできたんだ。
でも、そうしなかった。“できなかった”のではなく、おそらく、“しなかった”。
どうして、そうしなかったのだろう…。
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