AIが決めた恋
「先生。」
「何だ?」
「どうして、事故だと信じてくれたのですか?私達2人が、口裏を合わせて嘘を言っているかもしれないのに。」

先生は、右手を顎に当て、少し考え込む。

「…あの時、信じてやれなかったからな。」

“あの時”。きっとそれは3年前のことを意味して居る。

「お詫びということですか?」
「お詫び…か。まあ、そんなところかもしれない。このくらいのことで、お詫びになるとは思っていないけれど。」
「そうですか。」

それだけ言うと、私は今度こそ振り返らずに、自習室を出た。
先生は、本当にあの時のことを反省しているみたいだ。でも…、私はまだ許すことができない。許せるほど、心に余裕がない。
きっと御伽噺のシンデレラだったら、もうとっくに許しているのだろう。でも私は、シンデレラじゃない。心の醜い脇役だ。
何にせよ、今日は大変な1日だった。頭と足が少し重い。帰る気力すら、もうほとんど残っていな──

「えっ…。」

廊下を曲がって階段を降りようとするところで足を止めた。
目の前には…、

「真島くん…?」

壁にもたれかかって、腕を組んでいる彼が立っていた。
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