AIが決めた恋
「今週の金曜日に何があるかは、皆、把握しているな?」

今週の金曜日。
前から先生が言っていたのと、クラスメイトの会話で、その話題が出ることが多くなったから知っている。

「皆が知っているように、今週の金曜日には遠足がある。場所は山だ。」

今どき、私立高校なのに遠足で山へ行く高校があるということに驚きだ。他の私立高校に通う友達は、遊園地や科学館へ行くと言っていたというのに。AIの研究でお金を使っているから、こちらにはあまりお金が回ってこないのだろうか。

「山とかマジつまんね〜!ただ山を登るのの何が面白いっていうんだよ。」

本田くんが、クラス全員に聞こえるような声でそう言った。

「何だ?本田。何か言ったか?」
「ただ山を登るだけの活動の何処が面白いのかって言ったんです。」

清々しいほど真っ直ぐに本田くんが言った。しかし、悪意は無さそうだ。きっと、思ったことをそのまま口にしたのだと思う。
本田くんは空気が読めないところがあるが、もしかしたら、嘘のない真っ直ぐなところが、彼の良いところなのかもしれない。
いや…、そんなことないか。

「本田、これはただの山登りじゃないんだ。」

先生がニヤリと笑った。

「どういうことっスか?」
「この山登りは、パートナーとの親睦を深める為の活動なんだ。」

それは知らなかった。
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