AIが決めた恋
「今は剣道に力を入れてるから。」

今までの人生で、行ってきた習い事は、全て父や母から習うように言われて習っていたものだった。しかし、中学から始めた剣道だけは、唯一自分からやりたいと思ったことだ。部活動紹介で、生き生きと勝負している先輩方に強い憧れを抱いた。

「ああ、剣道部だもんな。」
「まだまだ初心者だから、もっと練習しないと。」
「そういえば、剣道部の顧問の先生が、『1年から始めたのにみるみる実力をつけている天才がいる。』って、広大のこと、職員室で噂してたぞ。」
「そんな噂をされているのか?全然そんな事ないのに。」
「謙遜すんなよ〜。やっぱ広大は、選ばれた奴なんだよ!」
「選ばれた?」
「神に選ばれたっつーのかな。産まれた頃から何でも持ってる!だからこそ、お前が恋してる姿がみたいんだよなあ。」
「どういうこと?」
「何もかも完璧な奴が、どんな恋愛すんのか見てみたいんだよ。どうだ?俺と合コンでも行ってみねえ?」
「断る。今、大事なのは剣道だから。」
「話が振り出しに戻った!良いじゃんか〜、少しくらい青春しようぜ〜。」

友達からそう言われても、俺は全く恋愛をする気にはならなかった。
それよりも、部活や勉強もや進路など、大切にしなくてはいけないことが沢山ある。だから、恋愛は、高校や大学に入ってからで十分だと、本気でそう考えていた。
しかし、俺にとっての“春”は、自分が考えていたよりも早くやって来た。
それは、中学3年の4月の出来事だ。
その日は、始業式で、体育館で集会が行われてから、教室へと戻り、新しい担任の先生の話を聞いていた。
先生は、簡単な挨拶をすると、1人の転校生を生徒に紹介した。

「初めまして。隣街から転校してきました、影石愛です。」

それが、俺とあいつの出会いだった。
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