AIが決めた恋
「私も同じ。父が議員ってわけじゃないけど、祖父がとあるアプリ開発会社の社長でね。産まれた頃から、周りは皆、私に期待してた。」

影石愛が窓の外を眺めながら言った。

「だから、私は何でもできなくちゃ駄目で、誰にも負けちゃいけなくて、いつも完璧を目指さなければならない。この気持ち、分かる?」

『分かる』と、簡単に言葉にして良いことなのか分からないけれど、俺は軽く頷いた。俺にも似たようなところがあったからだ。
母と父が俺に期待していたかどうかは分からないが、少なくとも俺は、両親が自慢できるような、両親から褒められるような息子になれるよう、努力していた。

「でも、だんだんそれが重荷になってきちゃって。友達と笑い合っている時でさえ、『皆は気楽で良いな』なんてことを思っちゃうの。そんな自分が嫌で…。それで、なんだか泣けてちゃってさ。」

頬で光らせる彼女の涙を消すために、俺は必死に言葉を選んだ。

「あんまり、背負いすぎるなよ。」

必死に選んだ割には、当たり障りのないような言葉しか出てこなくて、そんな悔しかった。
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