AIが決めた恋
「それで大丈夫だけど、私に考えがあるの。」

桃野さんは目を輝かせた。

「考え?」
「ダブルデートをしたいのです!」
「ダ、ダブル…デート?」

『デート』という語彙の意味を頭で認識するまでに、少し時間がかかった。
そうか。今まであまり意識したことがなかったが、『パートナー』というのは、一応、恋人同士のようなもので、『顔合わせ』というのは、一般的に言うと『デート』なのかもしれない。
“クラスメイトの桃野さんと顔合わせをする。”
というように表現をすると、あまりにも普通のことのように思えてしまうが、
“恋人の桃野さんとデートをする。”
と表現をすると、前者とは少し異なる意味を持つ。
後者は考えただけで恥ずかしいし、桃野さんのことを変に意識してしまいそうだ。

「パートナーが決まったら、ダブルデートをしようと藍ちゃんと約束してたの!」

そんな約束をしていたのか。
湖川さんは普段、人とほとんど干渉しない。だから、湖川さんと『ダブルデート』という言葉が全く結びつかず、上手く想像することができない。

「藍ちゃん達も一緒じゃ駄目かな?」
「構わないよ。」

桃野さんは、湖川さんの話をする時だけ、とても生き生きしている。きっと、スタートもゴールも、隣に湖川さんがいた方が、彼女は喜ぶのだろう。

「ヤッター!ありがとう佐倉くん!じゃあ、早速藍ちゃん達にも聞いてみるね!」

桃野さんはそう言うと、ダッシュで教室の隅へと移動した。見ると、そこには湖川さんと真島くんが話し込んでいた。
< 52 / 508 >

この作品をシェア

pagetop