AIが決めた恋

「湖川さん？何処？」
「ほら！50mくらい先にいるの見えない？」

人がいるのは見える。しかし、それが湖川さんであるかどうかまでは分からない。

「よく分かったね。視力が良いの？」
「そんなことないよ。右目が0.8で左目が0.7。」

特別悪くは無いが、良いとも言えない。その視力で50m先にいるのが湖川さんだと分かるのは、もはや才能ではなかろうか。

「でも、どうして藍ちゃんは一人でいるんだろう。真島くんと一緒にいるはずなのに。」

確かに。彼女達も僕達と同じように、この遠足を顔合わせ代わりにすると言っていた。そうするには、スタートからゴールまで一緒に山を登る必要がある。

「私、声掛けてくるね！」
「あ、ちょっと、待って…！」

僕の言葉など全く気にせず、桃野さんは物凄いスピードで走っていった。
『あまり体力を消耗したくないな。ゆっくり歩いていかない？』
と言っていたのが嘘のようだ。やはり、湖川さんのことになると、人が変わるらしい。
僕も彼女の後を追うことにした。