AIが決めた恋
「そ、そういえば、湖川さんは小説を読むことが好きなんだね。桃野さんから、月に10冊以上読んでいると聞いたよ。」

僕は、以前桃野さんから聞いた情報を話題に出した。

「あ、はい。」

最近はどんな本を読んだのか、今なら答えてくれるかもしれない。しかし、僕はとても大変なことに気がついた。
そういえば、桃野さんが以前、湖川さんは過激な本を読んでいると言っていたのだ。

「それがどうかしましたか?」
「あ、いや…。」

聞くべきだろうか。いや、それこそセクハラになってしまう可能性もある。でも、気になる。

「色々なジャンルを読むんだね。」
「はい。」

僕は決意を固めた。

「あの、その、桃野さんから聞いたんだけど、1ヶ月くらい前に、か、か、か…!」
「か?」
「か、か、かげ…過激な──」
「あ、もしかして、『歌劇団の花』のことですか?」
「え?」

か、歌劇団の花…?ま、まさか…、桃野さんの言っていた『かげき』って…。

「丁度、1ヶ月くらい前に読んでいました。『歌劇団の花』。とても面白かったですよ。」

僕は安心の溜息を大きくついた。

「なんだ。『かげき』って、『歌劇団』のことか。びっくりした。」

驚きすぎて、思わず思っていることが声に出てしまった。

「え?…何と思っていたのですか?」

まさか、湖川さんが過激な本を読んでいるのかと勘違いしていたなんて、言えるはずがない。

「ううん、何でもない。僕も今度読んでみようかな。」

誤魔化しにもならないような誤魔化しをした。
何となく前方の方を見つめると、1組の男女が慌ててこちら側に向かってきているのが見えた。
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