AIが決めた恋
「乗れ。」

真島くんが言う。

「え…?」

それを湖川さんが、とても意外そうな目で見つめている。

「早く乗れ。」
「なるほどですね。反省文、嫌ですよね。それなら、私が真島くんの分も書いておきますので、どうか私のことは放っておいて、先にゴールしてください。」
「やっぱり、触れるのが怖いか?」

触れるのが怖いとはどういう意味なのか、2人がどのような関係性を持ったパートナーなのか、僕には全く分からない。しかし、2人は何処かで確実に通じ合えているような、そんな雰囲気を持っていた。

「そうではなくて…。迷惑をかけてしまうので…。」
「迷惑かけたっていいんだよ!」

真島くんが叫んだ。

「えっ。」
「これでも一応パートナーなんだ。俺だってこれから沢山迷惑をかけるかもしれないから、お互い様だ。それに…君一人置いていけるわけないだろ!一緒にゴールしなくちゃ、意味無いんだよ!」

おそらく、その場にいる全員が息を飲んだだろう。
普段、無口なだけに、感情が入ると、とても説得力があるように聞こえる。
きっと、湖川さんもそう思ったのだろう。

「分かりました…。」

そう言って、湖川さんは真島くんの背中に乗った。

「それじゃ、俺達はこれで。」

真島くんはそう言うと、湖川さんを背負ったまま、山道を登り始めた。
なんだか、胸の奥が痛むような、どこか落ち着かない。何故だろう。何故湖川さんと真島くんを見ていると、こんなにも複雑な思いがするのだろう。
湖川さんが真島くんの後ろを歩いていたと聞いた時、なんとなく2人はあまり上手くいっていないのかと思った。でも、今の場面を見て、はっきりと分かった。2人は、パートナーの中でも、特別な関係だ。そんな気がした。

「2人も行っちゃったし、私達も行こう。」
「そうだね。」

僕は複雑な気持ちを払拭(ふっしょく)しきれないまま、再び山を下り始めた。
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