AIが決めた恋

優しい人だと思われます｡

「ん。着いたぞ。」

そう言って彼が背中から私を下ろした。
はぐれてしまったり、真島くんにおんぶをしてもらったりなど、色々なことがあった山登りも、先程無事にゴールした。
誰かに背負ってもらったのは、何年ぶりだろう。何だか少し…いや、かなり恥ずかしかった。

「ごめんな。いなくなったことに早く気づけなくて。」

彼が謝る必要は微塵(みじん)もない。悪かったのは私だ。

「大丈夫です。私は人とはぐれてしまい易いタイプなのだと思います。どちらかというと、謝らなければならないのは、私の方です。」

彼が私の隣を歩いていなかったのは、きっと私が以前、男の人が苦手だと言ったからだ。真島くんは、口にはしないけれど、気を遣ってくれたのだろう。

「ごめんなさい。私がはぐれたせいで、遠足を顔合わせにすることができなくなってしまいました…。」

遠足へ行く前、先生は、この遠足を顔合わせ代わりにできると言っていたが、それはスタートからゴールまで一緒にいることが条件であると言っていた。
彼と私は、初めて顔を合わせた時に、必要以上に干渉はしないと約束した。それなのに…。

「そんなこと、別にどうでもいいんだよ。」

真島くんが吐き捨てるように言った。

「でも…。」
「近くの喫茶店へ行こう。そうすれば済む話だろ。」

『喫茶店へ行こう。』
彼の口からそんな言葉が出るだなんて、予想もしていなかった。

「良いのですか…？」
「俺は別に構わない。逆に君はどうだ？」
「私も、構いません。」

男の人に近づくのは、やはり今でも少し怖い。しかし、真島くんの背中は温かかった。いつもツンとしているけれど、本当はきっと優しい人なのだと想う。

「じゃあ、行くぞ。」
「はい。」