AIが決めた恋

心地よいディスタンス

湖川さんと並んで歩いている。以前にも彼女が裕さんとはぐれた時に一緒に歩いたことがあるが、実はあの時は、かなり緊張してしまっていて、よく覚えていない。
湖川さんは、どのくらいの速さで歩いていただろうか。できるだけ彼女の速さに合わせて歩きたい。

「うどんで良いと言っていたよね？」

確認の為にそう聞いた。

「はい。」
「どうしてうどんだったのかな？」
「きっと、陽芽の好物がうどんだからだと思います。」

少しぎこちない。でも、それで良い。僕と湖川さんはただのクラスメイトで、それ以上でもそれ以下でも無いのだから。

「英語はどう？できそう？」
「あまり自信がないです。でも、せっかく真島くんが熱心に教えてくださっているので、それに応えたいと思っています。」
「真島くんと湖川さんは仲が良いんだね。」

実際に、勉強を教えている真島くんは、いつもより生き生きとしているように見えた。
他の人が入る隙は無いような、親密な雰囲気であった。

「そう見えましたか…？」

彼女は喜ぶのかと思っていたが、少し複雑そうな表情をして、俯(うつむ)いた。

「もしかしたら、真島くんは私のことがあまり好きではないのかもしれません。」
「そんなことはないと思うけど。どうしてそう思うの？」
「今朝、私とは結婚できないかもしれないと、そう言われたのです。」

『結婚』。その言葉に、妙に反応してしまう。普段はあまり意識していないが、パートナーとは、一応将来の結婚相手なのだ。

「将来のことは、まだはっきりとは分からないんじゃないかな。」
「それなら良いのですが…。…佐倉くんは、将来ももちゃんと結婚するつもりですか？」

それはとても難しい質問だ。僕も初めは恋愛などという面倒なものをすっ飛ばして結婚相手を見つける為にここに来た。
でも、いざそれが現実になると、本当にそれでいいのか分からなくなる。