男装の姫君は王子を惑わす~麗しきアデールの双子
ノルが嫌そうに言うので、声をあげて笑いそうになって慌ててロゼリアは笑いをかみ殺した。
イリスは男と女で見せる顔を使い分けているが、性格は厚い化粧の下から漏れ出しているようである。
ジルコンはロゼリアを見ながらいう。
「姫は、一人でステップを踏んでいると苦手そうにみえないし、リズム感が悪いというわけでもない。俺とペアになって皆と並んで同じことをしている時はそうでもないのに、最後の、さあ自由に踊ってくださいとなったら途端に重くなる。姫だって、だんだん体が固くなっていって、踊りにくそうだ。俺の側に問題があるのか、姫に問題があるのか、それとも両方なのか」
「ほら、手を貸せよ。踊ってみればわかる」
ノルはジルコンに手を差し出した。女性の手の形である。
ジルコンはその手を下から支えた。いつものロゼリアとダンスをするときと同じように。
そのままジルコンとノルはもう一組だけが残る広い会場の真ん中へ歩み進む。
息をそろえると、音楽なしで会場をいっぱいにとってワルツを踊りはじめた。
ジルコンの背筋はすくっと伸びて足運びも方向転換もスムーズなことに、ロゼリアは驚いた。
ぎくしゃくしていたのが嘘のようである。ジルコンも驚きの表情で踊っている。
ノルはジルコンに体をほんのわずかに触れ合わせ、背中を柔らかく反らせて体を預けていた。
男子と男子のペアなのに、自然で優美だった。
ため息がつきたくなるくらい美しい。
ジルコンには何の問題もない。むしろかなり上手な部類である。
それと同時に、普段男子パートを踊っていたからといって、自分が女子のパートが踊れないというのは言い訳に過ぎなかったことを、ロゼリアは知ってしまった。
「どうだった?」
二人は息をはずませてロゼリアのところに戻ってくる。
ロゼリアは拍手で迎えた。
「ノルを男にしておくのがもったいないほど、美人だったわ!ジルコンもとてもよかったわ」
美人といわれてまんざらではなさそうである。
ジルコンは魂の抜かれたような顔をしている。
今のノルとのダンスを理解しようとしているのだろう。
「ジルとしてはどうだった?」
「……とても、とても、踊りやすかった」
「はは。そうだろうな。ではロゼリア姫」
ノルは弾む息のままにロゼリアに手を差し出した。
男性が女性パートナーを誘うように。
「今度は俺がロゼリア姫と踊れば、ジルとロゼリア姫がうまくいかない理由がわかるよ」
「相性が悪いのではなくて?」
ロゼリアの言葉にノルは笑う。
「相性じゃないってさっき言わなかったかな。君たちはどうも相性の悪さを原因にしたがっているようだけれど、原因は他にあるよ。もう既に、俺にはわかっているんだけどね。それを確認するために、ロゼリア姫、お手合わせをしていただけますか?」
ロゼリアはノルの手を取った。
緊張に体を固くするロゼリアに大丈夫だよと、優しくノルが囁く。
次は、ノルとロゼリアの番であった。
イリスは男と女で見せる顔を使い分けているが、性格は厚い化粧の下から漏れ出しているようである。
ジルコンはロゼリアを見ながらいう。
「姫は、一人でステップを踏んでいると苦手そうにみえないし、リズム感が悪いというわけでもない。俺とペアになって皆と並んで同じことをしている時はそうでもないのに、最後の、さあ自由に踊ってくださいとなったら途端に重くなる。姫だって、だんだん体が固くなっていって、踊りにくそうだ。俺の側に問題があるのか、姫に問題があるのか、それとも両方なのか」
「ほら、手を貸せよ。踊ってみればわかる」
ノルはジルコンに手を差し出した。女性の手の形である。
ジルコンはその手を下から支えた。いつものロゼリアとダンスをするときと同じように。
そのままジルコンとノルはもう一組だけが残る広い会場の真ん中へ歩み進む。
息をそろえると、音楽なしで会場をいっぱいにとってワルツを踊りはじめた。
ジルコンの背筋はすくっと伸びて足運びも方向転換もスムーズなことに、ロゼリアは驚いた。
ぎくしゃくしていたのが嘘のようである。ジルコンも驚きの表情で踊っている。
ノルはジルコンに体をほんのわずかに触れ合わせ、背中を柔らかく反らせて体を預けていた。
男子と男子のペアなのに、自然で優美だった。
ため息がつきたくなるくらい美しい。
ジルコンには何の問題もない。むしろかなり上手な部類である。
それと同時に、普段男子パートを踊っていたからといって、自分が女子のパートが踊れないというのは言い訳に過ぎなかったことを、ロゼリアは知ってしまった。
「どうだった?」
二人は息をはずませてロゼリアのところに戻ってくる。
ロゼリアは拍手で迎えた。
「ノルを男にしておくのがもったいないほど、美人だったわ!ジルコンもとてもよかったわ」
美人といわれてまんざらではなさそうである。
ジルコンは魂の抜かれたような顔をしている。
今のノルとのダンスを理解しようとしているのだろう。
「ジルとしてはどうだった?」
「……とても、とても、踊りやすかった」
「はは。そうだろうな。ではロゼリア姫」
ノルは弾む息のままにロゼリアに手を差し出した。
男性が女性パートナーを誘うように。
「今度は俺がロゼリア姫と踊れば、ジルとロゼリア姫がうまくいかない理由がわかるよ」
「相性が悪いのではなくて?」
ロゼリアの言葉にノルは笑う。
「相性じゃないってさっき言わなかったかな。君たちはどうも相性の悪さを原因にしたがっているようだけれど、原因は他にあるよ。もう既に、俺にはわかっているんだけどね。それを確認するために、ロゼリア姫、お手合わせをしていただけますか?」
ロゼリアはノルの手を取った。
緊張に体を固くするロゼリアに大丈夫だよと、優しくノルが囁く。
次は、ノルとロゼリアの番であった。