男装の姫君は王子を惑わす~麗しきアデールの双子
30、ロゼリアの休日②
「そう!今まで互いの姿は伝聞や名人の手に寄る肖像画ぐらいしか事前に知ることはないだろ?深窓のお姫さまだ。彼女たちも参加し、人となりがわかるから結婚相手を選ぶのに、申し分がない。あなたも気に入った姫がいれば、直接アタックしたらいい。ただし厄介な問題が生じても自己責任だ、責任は自分で取れよ」
「いや僕は、国にサララがいる」
「サララ?」
「僕の従妹であり婚約者」
「婚約者、、、」
ジルコンの顔が一瞬翳った。
自分にも婚約者であるロゼリアがいることを思い出したのだろうか。
ロゼリアは、自分がサララに夢中であり彼女以外に誰かに惹かれることはないことを力説する。
先ほどのような男の悪だくみのような話はその場は楽しくても、実際に部屋に忍んで行けと言われるとたまらないからだ。
そんな話をしていると、開いている扉をあえて叩き、割って入ったのはジムである。
「そろそろ、アンさまのお荷物を運び入れてよろしいでしょうか?」
ジルコンはぎろりとジムをみた。
「で、どうしてジムが来ている?」
「わたしは王子の騎士でもあると同時に、アンジュさまの荷物持ちでもありますので」
しれっとジムはいう。
「ありがとう、そこに置いてくれる?」
ジムは指定された窓際の椅子の上に置き、「アンさま、ご遠慮なさらず、何かありましたらすぐに俺にお声がけくださいね」と、頭を下げて足早に部屋を出ていく。
随分部屋の外で待たせてしまっていたのだった。
それをジルコンは半ばあきれ顔で見送った。
「すっかりわたしの騎士たちを、アンは虜にしてしまったな。食事は三食、食堂で食べられる。今夜の夕餉はわたしたちの家族でいただこう。父があなたと話をしたいとうるさい。それまでは長旅で疲れただろう、自由時間だ。好きにするがいい」
「風呂は、、?」
ロゼリアは部屋を出かけたジルコンに聞く。
風呂好きのロゼリアには重大事項の一つである。
「共同風呂は一階にある。もしくは王城をでた城下町にも町内ごとに共同風呂がある。何せ、このあたりは温泉がでるからな。城下の町内の共同風呂はそれぞれ趣向をこらし、ひとつひとつ巡るのだけでも面白いぞ。この滞在中にすべて回れるのではないか?」
「面白いって、王子さまも城下町の風呂に入ったりするのか?」
ホカホカ顔のジルコンが城外を散歩しているような姿が思い浮かばない。
「悪いか?俺も温泉好きだ。エール国民の大半は温泉好きだといえるが、、、」
「案外エールの王子さまも自由なんだな、と思って」
「いつも護衛と一緒だ。それからあなたにも護衛を付ける。ジムがやりたいと全身全霊でアピールしているのだが、俺はアヤあたりがいいと思っているんだが」
誰がいい?とジルコンは間を空けた。
「護衛はいらない」
「なんだって?」
ロゼリアが言うとジルコンは聞き直した。
ロゼリアは自由に行動がしたかった。
ここはアデールではない。
誰もロゼリアに注目するものはいないことに気が付いていた。
ここでは、ロゼリアは他国からの王子ではあるが、それだけだった。
誰も監視する者も、小言を言う者もいない。
髪をとかしてくれる者も、肌にオイルを塗ってくれる者もいないが、旅の間中にも感じていたことだが、生まれて初めて手に入れた自由だということにロゼリアは気が付いてしまった。
それをあえて、エール国でも、アデールにいるときのように、四六時中付き従った者がいるのは邪魔だった。
四六時中付き従われたら、ロゼリアの秘密も感づかれてしまうかもしれない。
なら、いっそのこと護衛は不要だった。
「自分の身は自分で守れる。ジルも騎士たちとの鍛錬をみたのであれば、十分強いことはわかってくれただろう?田舎の小国の王子なんて誰も注目しないよ」
ロゼリアは胸を張っていう。
「お前なあ、一人で来たんだから、せっかく一流の俺の騎士をつけてやるというのに、普通それはありがたく受けておくところじゃあないのかなあ」
ジルコンは呆れたのだった。
「いや僕は、国にサララがいる」
「サララ?」
「僕の従妹であり婚約者」
「婚約者、、、」
ジルコンの顔が一瞬翳った。
自分にも婚約者であるロゼリアがいることを思い出したのだろうか。
ロゼリアは、自分がサララに夢中であり彼女以外に誰かに惹かれることはないことを力説する。
先ほどのような男の悪だくみのような話はその場は楽しくても、実際に部屋に忍んで行けと言われるとたまらないからだ。
そんな話をしていると、開いている扉をあえて叩き、割って入ったのはジムである。
「そろそろ、アンさまのお荷物を運び入れてよろしいでしょうか?」
ジルコンはぎろりとジムをみた。
「で、どうしてジムが来ている?」
「わたしは王子の騎士でもあると同時に、アンジュさまの荷物持ちでもありますので」
しれっとジムはいう。
「ありがとう、そこに置いてくれる?」
ジムは指定された窓際の椅子の上に置き、「アンさま、ご遠慮なさらず、何かありましたらすぐに俺にお声がけくださいね」と、頭を下げて足早に部屋を出ていく。
随分部屋の外で待たせてしまっていたのだった。
それをジルコンは半ばあきれ顔で見送った。
「すっかりわたしの騎士たちを、アンは虜にしてしまったな。食事は三食、食堂で食べられる。今夜の夕餉はわたしたちの家族でいただこう。父があなたと話をしたいとうるさい。それまでは長旅で疲れただろう、自由時間だ。好きにするがいい」
「風呂は、、?」
ロゼリアは部屋を出かけたジルコンに聞く。
風呂好きのロゼリアには重大事項の一つである。
「共同風呂は一階にある。もしくは王城をでた城下町にも町内ごとに共同風呂がある。何せ、このあたりは温泉がでるからな。城下の町内の共同風呂はそれぞれ趣向をこらし、ひとつひとつ巡るのだけでも面白いぞ。この滞在中にすべて回れるのではないか?」
「面白いって、王子さまも城下町の風呂に入ったりするのか?」
ホカホカ顔のジルコンが城外を散歩しているような姿が思い浮かばない。
「悪いか?俺も温泉好きだ。エール国民の大半は温泉好きだといえるが、、、」
「案外エールの王子さまも自由なんだな、と思って」
「いつも護衛と一緒だ。それからあなたにも護衛を付ける。ジムがやりたいと全身全霊でアピールしているのだが、俺はアヤあたりがいいと思っているんだが」
誰がいい?とジルコンは間を空けた。
「護衛はいらない」
「なんだって?」
ロゼリアが言うとジルコンは聞き直した。
ロゼリアは自由に行動がしたかった。
ここはアデールではない。
誰もロゼリアに注目するものはいないことに気が付いていた。
ここでは、ロゼリアは他国からの王子ではあるが、それだけだった。
誰も監視する者も、小言を言う者もいない。
髪をとかしてくれる者も、肌にオイルを塗ってくれる者もいないが、旅の間中にも感じていたことだが、生まれて初めて手に入れた自由だということにロゼリアは気が付いてしまった。
それをあえて、エール国でも、アデールにいるときのように、四六時中付き従った者がいるのは邪魔だった。
四六時中付き従われたら、ロゼリアの秘密も感づかれてしまうかもしれない。
なら、いっそのこと護衛は不要だった。
「自分の身は自分で守れる。ジルも騎士たちとの鍛錬をみたのであれば、十分強いことはわかってくれただろう?田舎の小国の王子なんて誰も注目しないよ」
ロゼリアは胸を張っていう。
「お前なあ、一人で来たんだから、せっかく一流の俺の騎士をつけてやるというのに、普通それはありがたく受けておくところじゃあないのかなあ」
ジルコンは呆れたのだった。