春の始まりに、もう一度君に会いに行く。
教室で自分の席に着き、机に突っ伏した。



人間関係ってめんどくさいな。



特に女子はめんどくさい。



皆があすかちゃんみたいにさっぱりした性格だったら…



愛莉みたいに優しかったら、いざこざは起きないんだろうな。





「佐々木さん、今日電車にいなかったけどどうしたの?」



田川君は登校してすぐに私に話しかけた。



顔を上げ、彼の方を見ると彼の背後から小林さんがこっちを見ているのが見えた。





「ごめんね、昨日教室に忘れ物しちゃって、早めに来てあるか確認してたの」


本当のことなんて言うことが出来ないから、嘘をついてしまった。






「それなら良かった!俺、嫌われたのかと思ったよ」



そう言って笑う田川君に対して罪悪感を感じるし、背後の小林さんの顔が怖いので彼の方を見ることが出来なかった。



「そういえばさ」と田川君は何か思い出したように続けた。





「俺、佐々木さんの連絡先知らないからさ、今日みたいな日に連絡取れるように教えてほしいんだけど」




そういえば、確かに一緒に登校してたけど連絡先知らなかった。





小林さんは怖いけど、断るのも田川君に悪いので「いいよ」と返し、LINEを交換した。





「ありがとう」と笑って彼は席に着いた。







ふと小林さんの方を見ると、何か言いたげな顔をして私を見ていた。






めちゃくちゃ不機嫌そうだな、あの人…。












その日は一日中小林さんに睨まれながら過ごした。







帰りのHRが終わり、カバンに教科書類を入れ終わると小林さんが近づいてくる気配がした。






やばいと思っていると、あすかちゃんが私の腕を引き「帰ろ」と言ってくれて逃げることが出来た。






階段まで行き「ありがとう、あすかちゃん」とお礼を伝えると、「優芽、悩みごとあるでしょ」と言われ、私の心が見透かされているような感覚がした。





ここで嘘をつくわけにもいかないので「うん」と正直に返した。





あすかちゃんはまた私の手を引き、そのまま屋上まで走り出した。






「この学校、屋上空いてるんだけどさ滅多に人が来ないんだよね」



「そうなんだ、知らなかった…」






中学は屋上が施錠されていたから、てっきり高校も入れないものだと思っていた。








「優芽の悩みって、田川と小林れなでしょ」








「うん…」








私はあすかちゃんに全部話した。




恋愛感情かはわからないけど、田川君と一緒に登校したいということ、



ただ、私なんかと噂になったら彼の迷惑になってしまうのではないかと思っていること、




小林さんに嫌われるのは別に構わないけど、目をつけられたらあすかちゃんのも何か危害を加えられるんじゃないかって思っていること、




あすかちゃんは黙って私の話を聞いてくれた。







「もうね…どうすればいいのかわからない…」


そこまで言い終わると、私の両目から涙が零れた。
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