春の始まりに、もう一度君に会いに行く。
夏休みもあっという間に過ぎていき、最終日になっていた。



課題もすべて終わっていたし、何もすることがないので部屋でゴロゴロしていた。






すると、いきなりスマホが鳴り、画面を見てみると愛莉からの着信だった。




とりあえず出てみると「優芽ー、夏休みの課題終わらないから手伝って」と泣きついてきた。



愛莉は毎年、夏休みの課題をため込んで最終日に電話をかけてくるのだ。





「わかった」と伝えて、愛莉の家に向かう。







『そろそろ着くよ』とLINEを送ると、『鍵開いているから入ってきて』と返ってきた。

愛莉の両親は共働きで、平日は家にいないからいつも勝手に入ってくるように言われる。





「お邪魔しまーす」と小さな声で言いながら家に上がり、愛莉の部屋のドアをノックしてから開けた。






「優芽ー、待ってたよ」と抱き着いてくる愛莉に「暑いから離れて」と言ってから部屋に入ると、あすかちゃんがいた。




あすかちゃんが「優芽も呼ばれたんだね」と言いながら、やれやれという表情をしていて「毎年のことだよ」と答えた。



何が終わっていないのかを愛莉に尋ねると、「数Iのワークと数Aのプリントと漢字のプリントと生物基礎のレポート」と返ってきた。



なんか、めんどくさいものばかり残っているな。








「優芽は数学の課題やってー」と頼んできたけど、あすかちゃんが「愛莉、自分が数学苦手だから優芽に押し付けようとしてるんでしょ。教えてあげるから自分でやりなさい」と諭されて、しぶしぶ自分でやることになった。




私は、漢字のプリントをやることになった。





「あすかちゃんは、何の課題押し付けられたの?」と尋ねると、「英語のワーク、答えついてるから写して適当に何問か間違えてカモフラージュしてる」と笑っていた。



まあ、自分の課題じゃないしいいのか。





「あ、そういえば優芽」

いきなり何かを思い出したようにあすかちゃんが声を掛けてきた。




あすかちゃんの方を向くと「夏祭りの日、どうだったの?」と聞かれた。







誤魔化しても仕方がないので、話した。



途中ではぐれてしまったこと、変なおじさんに絡まれたこと、田川君が助けてくれたこと、花火がきれいに見える穴場に連れて行ってもらったこと、田川君に帰りは送ってもらったこと、なんで一緒にいてくれるのかを聞いたら一緒にいると楽しいからと言われたことも、すべて。
< 18 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop