春の始まりに、もう一度君に会いに行く。
入学式が近づくにつれて、教室内の人が増えていき、担任らしき先生が入ってきた。



「初めまして、この1年3組の担任の牧田健司です。初めて担任を受け持つので至らない点もあるかと思いますが、よろしくお願いします」

若干頼りなさそうな先生なので、少し不安を感じた。

早く帰りたいと思いながら、先生の話を聞き流す。



「入学式の流れについては言った通りですが、今から1回だけ呼名の練習をします」

私は心の中でとてつもなく嫌な顔をした。

いや、もしかしたら顔に出ていたかもしれない。





小学校の卒業式も中学校の卒業式も呼名の時の声が小さくて聞こえないと何回も注意を受け、一人で練習をさせられたこともあった。


だから、このような呼名の返事は人一倍苦手であるし、とても嫌いなのだ。

先生に向かって「やめろやめろやめろ」と念じたが、通じず練習が始まってしまった。






佐々木優芽(ささきゆめ)

ついに名前を呼ばれ、「…はい」と返事をしたのだが「佐々木さん、もう少し元気に返事できる?」と言われてしまった。

心の中で元気に「嫌です!」と返した。

ふと彼の方を見ると、私の方を見ており、恥ずかしくてまた目をそらしてしまった。





田川海人(たがわかいと)

あの彼が元気よく返事をした。

想像していた声と違って少し高めの声だ。

田川海人君…か。

クラスの中心にいるような感じの人だし、私なんかと話すことはないだろうと思った。





入学式中もぼーっと過ごし、呼名の時も練習通りの大きさで特に何事もなく終わり、家に帰った。


家でも何かをするわけでもないので、早めに眠りについた。
< 2 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop