御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
「これはこれは……王子様に見つかってしまった」

透さんは私に「おいで」と視線を送り、それにすがって立ち上がり、彼にもたれかかった。
受け止めてくれた透さんは池畠さんの手を乱暴に解放すると、私を守るようにして抱き寄せてくれる。

「透さんっ……」

「遅いから心配してた。連絡もつかないし」

私には甘くそうささやいて、池畠さんには低い声で「答えられませんか」と言い放つ。
透さんがきてくれた安堵で夢中でしがみついた。

「いえ。彼女が店に来てくれたので、もてなしていただけですよ」

その言葉を受け、透さんは私を見た。

険しい表情を見れば、彼は池畠さんの言い分をまったく信じていないのは一目瞭然。その上で私に本当はなにがあったのかを聞き出そうとしているのだ。
……でも言えない。

「透さん……」

泣きべそをかいてそうつぶやくしかできず、透さんも眉を下げて「大丈夫?」と慰めてくれる。
これ以上ここにいたくない。池畠さんを見たくないし、シェフたちが隠れて見ている異様な空気も気味が悪い。

「透さん……帰りたい」

消え入るような声でそう訴えると、彼は私の肩を抱き、「わかった」とうなずいてくれた。
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