御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
涙が落ち着くまで待ってから、透さんは背を丸め、視線を合わせてくれた。
ああ……透さんの目を見るとホッとする。迷惑をかけてばかりなのに、優しい彼に頼りたくなってしまう。

「美砂のことです」

私がつぶやくと、彼はうなずいて続きを促した。

「今までは、美砂のために透さんへの気持ちを押し込めていました。でも……もう美砂にも譲れそうにありません……私、透さんが好きなんです……」

あれ……ちょっとズレちゃったかな。でも気持ちが止まらない。
彼もそれは少し感じとっているようで、かすかに苦笑いを浮かべている。

「うれしいよ。沙穂ちゃんにそう言ってもらえて。美砂に譲るなんてもう考える必要はないよ。俺だって沙穂ちゃん以外は最初から無理だから」

「じゃあ美砂はどうなるんですか!?」

私の大きな声に透さんは目を丸くし、「え」とつぶやく。自分でも驚いた。焦りすぎて、なにも悪くない透さんに責めるような視線を送っている。

「一ヶ月後のパーティーで、池畠さんは公式に美砂の婚約者になってしまうんです。どうしたらいいんですか!?」

バカバカ……!
理不尽すぎるって。なにやってるの私。

「……沙穂ちゃん。俺が口を出すべきかずっと悩んでいたんだけど、聞いてもいいかな」

透さん?
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