御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
解放されたレストランテラスは晴れた日が差して空気もよく、気分転換にはちょうどよかった。
しかし透さんの表情は晴れず、ため息をつき、柵に寄りかかる。
葵さんが現れたとたん、こうなってしまった。

「……透さん」

声をかけると「ああ」と返事をするものの、にこやかな表情には戻らない。

「お兄さんがお嫌いなんですか」

ズバリ聞いてみると、透さんは笑みを落とした。

「ただの嫉妬だよ。手紙に書いてしまったから沙穂ちゃんにはバレてるよね。……昔から兄がコンプレックスなんだ」

透さん……。
弱みを話してくれた彼が愛しくて、手を握った。

透さんは正直だ。彼は私が姉をサポートしている姿を尊敬すると言ってくれたけど、多分私も同じ。本当は姉がコンプレックス。彼女の陰ではなく、光を浴びる存在になりたかった。
そんな本心を隠すため、こうする道を選んでいるだけなのだ。

真っ向から自分を見つめている透さんはすごい。
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