御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
ふたりで過ごす時間はすぐに終わり、また人混みの中に戻ることに。
パーティーはプログラム通りに進み、もうすぐお披露目の時間となる。

私はキョロキョロと周囲を見渡した。
なにも変化はない。透さんも涼しい顔で隣を歩くだけだし。

遠目で確認すると、美砂は相変わらず葵さんと話し込んでいる。
まだ池畠さんも来ていないらしい。

このまま池畠さんが来れなければ、お披露目は中止になるのかな。
いや、分からない。不在でも発表はできるし……。
ああ、ダメだ!

「透さん。もうすぐタイムリミットですっ」

焦って透さんの腕にすがり、抱きついた。なにか言って透さん! 私にはただ時間が過ぎているようにしか思えない。

彼は私の背中に腕を回して受け止めると、空いている手の腕時計に目を落とした。

「そうだね。もうすぐ時間だ」

「え?」

そして彼は私の手を引いて、テラスへと出た。

そこにはすでに人が集まっていて、道路の向こう側に指をさしている。
……なんだろう?
外が騒がしい。

皆が釘付けになっているのはここから向かいに見えている真っ白な建物。そこの入り口にはカメラを抱えたマスコミが詰めかけており、キャスターが厳しい口調で報道しているのが分かる。
離れていてなにを言っているのかまでは分からない。
なにが起きているのかも。
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