御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
私が透さんを鮮明に覚えているとも知らず、美砂はここへ持ってきて膝に置いていたA4サイズの冊子を二冊、テーブルの上に出した。

一冊はずっしりと重そうなピンクのアルバム。もう一冊は、経済雑誌だ。
まず姉はアルバムを先に開き、私たちと透さんが三人で写っている写真を指差した。

「……懐かしいね」

ついそうつぶやいてた。
凛と立つ透さんと、ピースをして彼の隣に寄り添う美砂、そしてぎこちない笑顔の私。

あの頃の透さんがよみがえる。

透さんは美砂よりさらにふたつ年上で、私とは三歳差。

私たち姉妹は幼稚舎から大学までエスカレーター式の『アベリア女子学院』出身で、先に大学に進学した姉はすぐに、隣にある最高学府『東帝大学』のボランティアサークルに加入した。
そこにいたのが、大人気の透さんだった。

アルバムの彼を見ると、当時の人気ぶりに改めて納得する。

平均的な男性より頭ひとつ分飛び抜けていた背丈に、フォーマルもカジュアルも着こなす抜群のスタイル。
甘く若々しい美形なのに、艶のある黒髪が真面目な印象を際立てていた。
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