御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
埼玉県に入ってから三十分ほどのドライブで、川沿いの桜祭りの賑わいが見えてきた。
空車を待つ駐車場の渋滞でも私たちは気長に雑談をし、ちょうどお腹が空いてきた頃に駐車の順番がやってくる。

地上に足をつけ、橋を渡って早々、私は興奮気味にぐるりと景色を見渡した。

川に沿って整備された堤防の両サイドには数えきれないほどの立派な桜の木。
幹から幹への距離は数メートルあるのに、花びらは密集していて木々の継ぎ目がなくなり、一キロメートル先まで続くまさに桜のトンネルだ。

渋滞が表していた通りの人混みと、種類豊富な出店の数々が連なり、華やかな雰囲気はまるで別世界のよう。

「す、すごい……! 綺麗……!」

見上げながら、感嘆の声がもれる。

すると隣にいた透さんの顔が、ちょうど身長差のせいで視界の横から現れ、「気に入った?」と覗き込んでくる。
非日常な景色の中の素敵すぎる彼に、私は火がついたように熱くなった。

「は、はい」

慌てて顔を正面に戻してから、そう小さく返事をした。
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