御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
「からかわないでくださいっ」

真剣に訴えたつもりが私の声は無意識に甘くなる。
恥ずかしさで涙が出そうになると、透さんは私の前髪に触れた。

「からかってないよ。ごめんね。たこ焼き買ってあげるから」

今度は子供扱い。頬を膨らませたい気持ちが込み上げたが、女扱いよりはだいぶ心臓に優しいと気付き、子供らしく拗ねた声で「たこ焼き食べたいです」と答えた。

八個入りのたこ焼きを買ってもらい、偶然空いた石段の席にふたりで座る。

つま楊枝でひとつ持ち上げ、フーフーと冷ましてから、口に入れた。

「ん……おいひい!」

濃い味つけも好きだし、なによりこの景色の中で透さんとふたり。
たこ焼きがお腹に入る温かさで、余計に幸せがあふれてきた。

「よかった」と優しい笑顔を向けてくれる透さんに胸がキュンキュンして止まらず、もうこれはどうにもできないとトキメキに心を委ねる。一時の幸せだけど、今がもう少し続いてくれたら。

「あの。写真を撮ってもいいですか」

スマホの入ったポシェットをキュッと握り、透さんにたったひとつの許しを乞うた。
一枚だけでいいから、今日の記念に透さんの写真が欲しい。
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