御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
綴られている小さな幸せを噛み締めるような彼女の日常は、俺の生活とは似ても似つかなかった。
俺のどこを気に入って手紙を渡してきたのか知らないが、俺はきみの想像するような立派な男ではないよ。

自嘲気味になりながら、二枚目の便箋へ移る。

【しかし私は、これでいいのかと日々悩んでいます】

ん?

【自分の世界がとても狭い気がして、今いるエスカレーター式の学校も、決められた生活も、まるで鳥かごのように感じます】

……分かる。そうだよな。

【今になって、外の世界に出てみたいと思いました。ほかの大学の皆さんのいるサークルに入ったのもそのためです。透さんは、どうしてですか?】

俺は、どうしてだろう。
彼女のまっすぐな言葉に影響され、少しだけ自分を振り返った。俺にも自由はなかったが、今は家を出て、気楽に過ごしている。それで不自由はないと思っていた。

【私の話ばかりしましたが、もっと透さんについて知りたいです。よければ、ぜひ教えてください】

俺は彼女のように、人に話せるほど、自分を知らない。彼女に返事を書くとしたらなんと答えよう。自然とそればかりを考えた。
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