御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
ボランティア当日。実物の沙穂ちゃんは、控えめで礼儀正しい女の子だった。
『はじめまして。乙羽沙穂です。よろしくお願いします』
植林をするに相応しい、上下グレーのジャージを着ている。セミロングの黒髪を高い位置で結い、姉の美砂の陰に隠れて立っていた。
『……はじめまして。三鷹透です』
本当にはじめましてなのか? 手紙を書いているのはきみなんだろう?
心の中でそう問いかけながら、彼女と共にいた。
沙穂ちゃんは魅力的だった。きっと手紙の件がなくても惹かれていただろう。しかし優しく、控えめで、常に姉を立てる姿勢はまさしく手紙のとおりで、この子がゴーストライターであってほしかった。
しかし、俺たちの関係には突然終わりがきた。
きっかけは、沙穂ちゃんからきた最後の手紙。季節は春の終わりで、夏はひまわり、秋は紅葉、冬は雪の結晶と移り変わった便箋のモチーフが、桜に戻った頃。
便箋二枚目の最後の三行。
【透さんは卒業研究が忙しくなりますね。落ち着いたらサークルにもぜひ顔を出してください。姉も話したいと言っていました】
沙穂ちゃんの唯一のミスだった。妹の立場で書いている。