御曹司は箱入り娘を初夜に暴く～お見合いしたら、溺愛が始まりました～

すると、扉の外から賑やかな声がし、すぐにノックされた。
よかった！ 美砂たちだ。

「和志さん、沙穂ちゃん、いる？」

「お姉ちゃん！ いるよ！」

池畠さんも私からサッと距離をとり、自然に立ち話をしていたポーズをとる。そのタイミングで扉が開き、美砂を先頭に、父と透さんも入ってきた。

「透さんっ……」

私はあまりの安堵に素直な声をもらすと、透さんは笑顔で「こんにちは、沙穂ちゃん」と名前を呼んでくれた。私はすぐに彼の隣に移動し、ピタリとそばにつく。

「沙穂ちゃん？」

まずい、普通にしなきゃ。怪しまれちゃう。でも今は透さんにくっついていたい……。

しかし、さっそく父が透さんと池畠さんを呼び寄せた。

「透くん。こちら、美砂の婚約者の和志くんだよ」

「お話は聞いています。高級レストランチェーン『ロータス』のオーナー池畠さんですね。はじめまして。三鷹透と申します」

「こちらこそ。池畠です。はじめまして」

ふたりは慣れた手つきで名刺交換を済ますと、それをポケットにしまった。
私がこの人を嫌いだと明かしたせいで透さんはやりにくいはずなのに、それを微塵も見せずに対応している。