御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
「十歳も年上ですし、男っぽいというか、ギラギラしていてすごく怖いんです。父は義兄妹になるのだから仲良くしろといつも話す場を作ろうとするのですが、私は苦手で……」

「たしかに、あの人ギラギラしてたね」

透さんは私の話に柔らかく相づちをうってくれる。ちょっぴり悪口なのに無下にせず共感してくれて、それだけで少し心が落ち着いた。

「だから俺のところに来てくれたの?」

ホッとしていたところに、甘くそう囁かれ。

「はい」

迷いなく返事をすると、彼はなぜか残念そうにうなだれた。

「透さん?」と手を握って声をかけると、彼は「大丈夫」と何事もなかったかのように背筋を戻す。

「沙穂ちゃん。これ」

ポケットからなにかとり出した透さんは、それを私の手の上に置いた。
かわいらしいシルバーの小さな鍵。

「これは……?」

「書斎にウォークインクローゼットがある。そこの鍵だよ。沙穂ちゃんが自由に使っていいから」

透さんは?と慌てたが、たしか見せてくれた寝室に別のクローゼットが置いてあった。
半分こして使おうって話だったけど、透さんはちゃんと私のを用意してくれていたんだ。

「ありがとうございますっ!」

このお部屋に私の居場所を作ってもらえた気がしてうれしくなった。
鍵ひとつで、こんなに心がワクワクする。
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