御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
「透さん。私、今日は少し外に出掛けてきてもいいですか」

コーヒーを出して、ダイニングに座った。彼は「えっ」と意外そうに声を出し、同じく向かいに座る。

「外に? どこか行きたい場所があるなら、会議が終われば連れていってあげられるけど」

「いえ、まだここらへんを散策できていないので、ぐるっと歩いてこようかな、と」

周辺には美味しいカフェや新鮮な品揃えのスーパーがたくさんあった。交番の場所や駅までの行き方、見ておきたいところはいくつもある。

家にいては透さんの邪魔になるし、この機会に行ってみよう。

「ひとりじゃ危ないんじゃないか。一緒に案内するよ」

透さんてば、父みたいに過保護なんだから。
おかしくてクスッと吹き出した。

「私は子供じゃないですよ。明るいですし大丈夫です。透さんって心配性なんですね」

指摘すると、彼は赤くなった。

「いや……きみはかわいいから、少し歩いただけで声をかけられそうで心配だよ」

でた! 〝かわいい〟
透さんのいつものお世辞。

「でも、そうだよな。これじゃあ沙穂ちゃんを閉じ込めているも同然だ。スマホの電源を入れておいて、なにかあったらすぐに連絡するんだよ」

「はい」

よかった。ここへきた最初の夜は妙な雰囲気になってしまったけど、あれからはこうしてお互い普通だ。
透さんも、なにか思うところがあったのかな。
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