御曹司は箱入り娘を初夜に暴く～お見合いしたら、溺愛が始まりました～
本当に嫌で泣きそうになっていたが、そんな私を引き寄せ、耳打ちしてくる。

「いいのかな？ そんな態度だと、きみのお姉さんをこっぴどく振ってもいいんだよ？」

サッと背筋が冷たくなり、体の力が抜けた。

「さ、中で話そうか」

体格の違う彼に逆らうことはできず、なにより美砂を引き合いに出されては反抗できない。
私は背中を押されながら、開店前の『レストラン アリア』中へと連れていかれた。


「オーナー、おはようございます」

奥からシェフがわらわらと出てきて、若い人から年配の人まで、池畠さんに頭を下げる。
彼はそれに「ああ」とだけ返事をし、私を奥のソファ席へと座らせた。

中はシンプルだ。さすがにここで、変なことはしないはず。人の目もあるし。……大丈夫だよね？

「食事は？」

そう聞かれ、「食べてきたのでなにもいりません」と答える。すると池畠さんは無視して男性のウェイターさんを呼び、「新作のデセールを」と注文した。

「この方はね、義理の妹になる子なんだ」

ついでに彼はウェイターさんにそう告げると、相手は「えっ」と驚いた目で私を見た。

「すみません、開店前に……」

私は悪くないけど、ご迷惑をかけているのは間違いない。縮こまって頭を下げる。

「い、いえ。そうでしたか。ごゆっくり」

ウェイターさんは無表情で会釈すると、すぐに戻っていった。
……ん？ 仮にもオーナーから紹介されたのに、なんだかよそよそしい感じがする。
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