御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
「美砂……?」

「この結婚は俺にとってメリットは大きいけど、マストじゃない。俺の心がきみに奪われていて、肝心の美砂にはまったく興味がないとバレようが別にかまわないんだよ?」

「やめてください!」

両手で机を叩いて立ち上がっていた。カラトリーがカチャンと大きな音を立てる。シェフたちが一瞬ざわついたが、誰も出てこない。

「あー、今夜にでも言ってしまおうかな。美砂に、きみの妹の誘惑にうっかり落ちてしまったと」

なんて人……。
どうすれば私が一番困るのかをよく分かっている。美砂の尊厳を傷つけることは絶対に避けたい。
美砂が私と比べようがないほど魅力的な存在だなんて誰もが分かっているけど、それを覆す台詞を婚約者に言われたら、彼女は泣いてしまうだろう。

傷つけたくないし、なにより嫌われたくない。ずっと仲良しでやってきたふたり姉妹なのに、こんな男に台無しにされるなんて耐えられない。

「味見でいいんだよ、沙穂ちゃん。ね? それができれば俺は満足するんだ」

どちらか選べ、ということ……?
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