懐妊一夜~赤ちゃんを宿したら極上御曹司の盲愛が止まりません~
天井高で全面ガラス張りの開放的なリビング。その隣にはダークブラウンを基調としたアイランドキッチンが完備された広いダイニングが続いている。三十畳を超える広々としたその空間にいるのは結斗さんと私だけ。

そのラグジュアリーな空間に圧倒されているというのもあるが、なにより男の人の家に上がり込むということは……きっとキス以上のことが待ち受けているんではないか。いや、考えすぎなのかな。

そんな心の動揺を悟られないように平静を装い、ケータリングで頼んだ料理をダイニングテーブルに並べていく。そしてひと通り並べ終えると、結斗さんと向き合って座り、シャンパンで乾杯をして食事を始めた。

どれも美味しそうな料理だが、緊張していて箸が進まない。


「蜜葉? 食が進んでいないようだがどうかしたのか?」

目の前の席に座る結斗さんが心配そうに私の顔を覗いた。

「いえ。特に何でもないです」

まさか変に意識してしまって……なんて言えない。慌てて目に飛び込んできたお寿司へと箸を滑らせた。パクリと雲丹の軍艦を頰張れば、その濃厚な甘みに自然と笑みが溢れる。緊張をしていても美味しいものを食べれば、単純な私は上機嫌になるらしい。

「蜜葉は本当に幸せそうにご飯を食べるな」

「え?」

「そんな蜜葉を見ていると俺まで幸せな気分になる。一緒に食事をするこの空間が楽しいと思えるんだ」

「そうなんですか?」

「ああ。アネッロで蜜葉に会った時もそうだったが、嬉しそうにオムナポリの美味しさを熱弁する蜜葉を見ていてとても可愛らしいと思った。誰かと食事をしていて楽しいと思えたのは久しぶりだったんだ」

柔らかな笑みを浮かべながら、結斗さんはそんな意外なことを口にした。
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