嫌いなあいつの婚約者!?
 ちゅんちゅんちゅんと優雅に鳴く鳥。その声で目が覚める。

 いつもはうるさい目覚し時計の音で目が覚めるのに、何故だか今日はその音も鳴らずに聞こえるのは自然の音。

「って、遅刻っ…………ん?」

 体を起こすと、見える景色が昨日の夜にみた部屋とはまったく違い、ここは一体どこなのか、まだ夢でもみているのだろうかと頬をつねってみたけれど、当たり前のように痛い。

「なにここ……?」

 自分の今までいた六畳の部屋よりも何倍も大きく、今体を預けているベッドなんて比べられないほどにふかふかしていて、何人寝られるんだよ、というほど大きくて、貴族かなんかが住む城の一室のようだった。

 ぼーっとベッドの上で状況を整理しようとしていると、自分の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。

「桜さま、お目覚めですか?」

「桜さま?」

 1人の若い女の人がいつの間にか現れていて、その人は黒と白の清楚なメイドの服を着ている。

「あら、今日もまた寝ぼけているんですか? 早くしないと、学校に遅れますよ。それに、婚約者の涼さまをあまり待たせるのも良くないです」

「涼さまって……」

 その名前に覚えはある。

 所謂幼馴染みというもので、とにかく性格が悪く、のくせに女子にはもてる風貌をしていて、クラスの人は爽やかとか彼のことを言うけれど、私からしたら悪魔でしかない。

「もう、とにかく、早く着替えましょう」
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