嫌いなあいつの婚約者!?
「お父……様」

 で、呼び方はいいのかしら。

 こんな風に呼んだことなんて当たり前にないから、なんだか歯痒い。

「どうした?」

 これで合っていたみたい。

「あの、婚約のことなんだけれど……」 

「なんかあったか?」

「どうしても、彼じゃないとだめかしら?」

「うむ…………涼くんが嫌なのか?」

 そう、はっきりと聞かれるとこちらも本当のことを言いづらくなる。

「いや、その…………」

 誕生日パーティに発表したってことは、そう簡単には婚約を破棄なんて、世間的にも絶対に良くないのは分かっている。

 今ここで拒否するのは良くないかもしれないと、ふと頭に浮かぶ。

 もう少し冷静になって、この涼との結婚を阻止する方法を色んな方向から考えなくちゃ。

「ううん、やっぱり、なんでもないわ」

「そうか。もしなんかあったら言うんだぞ?」

「ありがとう」

 とりあえず、涼が誰かに片思いをしているかもしれないということを調査していこう。

 涼の方から、婚約を解消したいと申し出があれば、もちろんそれに私は同意しなんとかしてお父さんにお願いすればいい。

 きっと、分かってくれるはず。

 部屋に戻って、大きなベッドに身体を預けた。

 自分が思っていたよりも随分と疲れていたのか、瞼はすぐに閉じて夢の中へと飛び立った。
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