妖の木漏れ日カフェ

「ここよここ」

「えっ、ここって」

「オータムランチセット、私の大好物なの」

 見間違えるわけがない、そこはカイさんのカフェで私が働いている場所。

 店内に入るといつも通りの香ばしい匂いが漂ってきて、でも今日はお客で来ているということで少し変な感じがした。

「オータムランチ2つね」

「はいよ」

 いつも賄いを食べていたからちゃんとしたオータムランチは食べたことがなくて、料理が出される前から楽しみで仕方がない。

 栗ご飯にサツマイモのお味噌汁、サツマイモとカボチャときのこの天ぷらに、蓮根の煮物、秋鮭の塩焼き。

 そしてランチにつくのは、小さくて可愛らしいスイートポテト。

 そんな夢のような秋の味覚の詰まったランチは見た目にも美しくて、オータムランチが始まってから2週間が経つけれど、連日、特に女性に人気だ。

「お菓子じゃないのに甘い野菜って、罪悪感なく食べられるから大好きなのよね」

「本当、美味しいですよね。秋の野菜って」

 まだ食べていないにもかかわらず、その味が口の中に広まる。

「お待たせいたしました」

 ついに、ランチが運ばれてきた。

「んー、これこれ。もう既に視覚からだけでも美味しいわ」

 スミレさんはいつも以上にテンションを上げていて、その姿は美しさにプラスして可愛らしさもあった。

 
< 77 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop