お見合い回避のために彼氏が必要なんです
 飲み物を注文して席に座ると、先輩は名刺を取り出した。

「この会社は、学生の頃に友人と始めた人材派遣会社なんだ。レンタル彼氏もそのひとつ。俺の名前が入ってたのは、サクラ。どうしても登録者が学生中心になりやすいから、上の世代もいるってアピールしたくて、登録してあるんだ。大抵、都合が悪いって断るんだけど。でも、今回は名前を見て、どうしても来たくなった。ただの同姓同名かもしれないって思ったけど、本人だったら会いたいって思ったから。だから、今日は来てみて良かった」

先輩はそう言って優しく微笑んだ。

「また、会ってくれる? もちろん、レンタル彼氏じゃなくて、ただの北村祐輔として」

「はい」

嫌なわけがない。

 私たちは、時間が経つのも忘れて、お互いの近況など話した。そして最後に、先輩が言った。

「さっき言ったのは、本当のことだから」

「さっき?」

「中学の頃、俺が清香を好きだったって話。清香には、俺はただの先輩だったかもしれないけど、俺はずっと清香を見てた。まぁ、まともに告白もできない情けない男だったけど」

う……そ……

あの頃、先輩は誰にでも優しかったから、私が特別だなんて思ってもみなかった。

「だから、今度は全力で行くから、覚悟しといて」

全力って何!?

覚悟って、どんな覚悟!?

私は、返事をするのも忘れて、ただ呆然と先輩を見つめる。



これって、もしかして、嘘から出たまことになったりする?



……ううん、そんなはずない。


普通に考えて、身長181㎝のイケメン社長なんだから、絶対モテるはず。

もし、本当に中学の頃、私を思ってくれてたとしても、今、もう一度好きになるなんて奇跡みたいなことが起きるわけがない。

浮かれて傷付くのは私だ。

舞い上がらないように、気をつけないと!



 それにしても、今日のレンタル彼氏代、返金されちゃったけど、良かったのかな?

ううん、やっぱり申し訳ないから、今度、先輩には何かプレゼントしよう!

何がいいかな?

あの頃の先輩は、機械いじりが好きで、パソコンとか触るのが趣味だったよね。

それを見て、かっこいいって思ったのが、私がSEになるきっかけだった。

でも、さすがにパソコン関係じゃ、色気がなさすぎだし。



ダメだ。

男の人が喜ぶプレゼントなんて、全然思いつかない。

なんて残念な女なの⁉︎

明日、光太郎……は当てにならないから、部長に相談してみよう!




─── Fin. ───



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