お見合い回避のために彼氏が必要なんです
 いつも通りけんかを始めた私たちを部長が呆れた顔で眺める。

「お前ら、相変わらずだな。ま、とにかく、困ったことがあったら、すぐに言えよ」

部長はそう言って、席に戻る。

はぁ……

なんで、こんなことで悩まなきゃいけないのよ!

別に結婚なんてしなくても、生きていけるじゃない。

田舎は結婚が早いかもしれないけど、都会はそうじゃないのよ。

って、お母さんに言っても、どうせ聞いてくれないだろうしなぁ。

困ったなぁ。



 昼休み、私は3歳年下の詩織(しおり)ちゃんとコンビニ弁当を頬張る。

「30過ぎて独身なんて、いくらでもいると思わない?」

私はそう言って、プチトマトをパクリと口に放り込んだ。

「清香さん、あれはどうです? レンタル彼氏!」

「レンタル彼氏?」

何かの情報番組で聞いたことはある。

「えぇ〜⁉︎ そういうのって、なんか怪しそうじゃない? どんな人が来るのか、分かんないし」

だったら、光太郎を焼肉1回くらいで買収して連れてった方が……

「それがね、そうでもないらしいんですよ」

なんだか、やけに乗り気な詩織ちゃんは、スマホの画面を見せてくれる。

「ほら! 顔写真とか年齢が出てるでしょ? まぁ、口元を隠してる人もたくさんいるけど。この中から、好みの人を選んで申し込むらしいんです。清香さん、試してみてくださいよ」

「えぇ〜」

私は実験台か!

まぁ、興味あるのは分かる。そこそこイケメンさんが並んでるんだもん。それほど仲良くない友達に見栄を張るには、最適だよね。

「まぁ、候補の一つとして考えとくよ」

私は、それで話を打ち切り、詩織ちゃんの彼氏の話に話題を変えた。

< 5 / 10 >

この作品をシェア

pagetop