夜空に見るは灰色の瞳
「そもそも、それを言うならそっちだってずっと敬語じゃないですか」

「魔法使いは呪文を唱えますからね。僕らにとって、言葉は大切なものであると同時に恐ろしいものでもあるんです。感情的になってついよくないことに魔法を使ったりしてしまわないよう、感情を抑える意味も込めて、いついかなる時も丁寧な言葉遣いを心がけるよう教わっています」
「……ああ、そうですか」


でもこの男の場合、言葉遣いは確かに丁寧だけれど、それによる距離感をちっとも感じない。
何と言うか、丁寧なくせにどこか馴れ馴れしいのだ。


「それは、ひょっとして褒めていますか?」

「……そう思えるとしたら、あなた相当おめでたいですね」

「ポジティブ思考でいることが、魔法使いには大事なんだそうですよ。ネガティブ思考になってしまうと、どうしても悪い方向に魔法を使ってしまいがちになるとか」


と言うことは、魔法使いとはみんなしてこの男のような性格の持ち主であるということなのだろうか。

魔法使いがこの世界にどれくらい存在しているのかは知らないが、他にもこんなのがいるのかと思ったら、想像しただけでげんなりして、思わずため息まで漏れた。
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