夜空に見るは灰色の瞳
「じゃあ、私も三永ちゃんと同じのにしようかな。そんなに美味しいなら食べてみたいし」

「是非、是非!きっと叶井さんもハマっちゃいますよ。あっ、親子丼二つお願いしまーす」


水とおしぼりを置きに来た店員さんにすかさず注文を告げると、三永ちゃんは早速水を一口。
そして、コップをテーブルに置くのと同時に


「さて叶井さん、この間中途半端に終わってしまったお話の続き、今日こそは聞かせてもらいますからね」


ついさっきまでとは打って変わって、まるで凄むような目で私を見ながらそう言った。
まさかとは思うが、今度は刑事物の漫画にハマっているなんてことはないよな……。


「……何の話?」

「とぼけたってダメですからね。今日こそは逃がしません」


三永ちゃんは怖いくらい本気の目をしているが、生憎と何のことだかさっぱりだ。別に、とぼけているわけではない。


「えっと……ほんとに何の話?私には覚えが……」

「もう、彼氏さんですよ!この前はいないって言い逃げしましたけど、絶対いますよね。でなきゃ、あそこで逃げる必要ないですもん」

「ああ……」


思い出した。私が対応を誤ったことによって招いたとんでもない誤解の件だ。
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