夜空に見るは灰色の瞳
「三永ちゃん、とりあえず一旦落ち着こう。ね?」

「じゃあ教えてくれます?」

「ちょっと“じゃあ”の意味がわからないけど、そういう人はいないんだってば」

「叶井さんが手強い!」


三永ちゃんの平手がテーブルを叩き、バンっと音が響くと、それでまた何人かがこちらを向いた。


「三永ちゃん、ほんとお願いだから落ち着いて……」

「叶井さん、やけに慌ててますね。あっ、もしかして、今ここにそのお相手が……」

「三永ちゃんのおかげで視線が集まってるから慌ててるんだよ!」

「やけに騒がしいテーブルがあると思ったら、叶井だったか」


呼ばれて勢いよく顔を上げると、テーブルの横に呆れ顔の大路くんが立っていた。
予期せぬ人物の登場に、思わずキョトンとしてしまう。


「……なに、してるの?」

「何って、昼飯に決まってるだろ。ここの親子丼が美味しいってお客さんに聞いてたから、一度来てみたかったんだよ」


なるほど、それ自体は別に構わないけれど、なぜそれがよりにもよって今日なのか。タイミングが良過ぎるだろう。
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