夜空に見るは灰色の瞳
「おっと!」


本当に零れそうになったところで、慌ててもう一方の手を添える。

両手のお皿に溢れんばかりに乗せられたのは、個包装されたチョコレートだった。


「ねずみさん印でお馴染みのチョコレートです!」

「うわ、懐かしい……。でも、こんなにいっぱい、いいの?」

「もちろん!最近見なくなったなーと思ってたら、この間たまたまスーパーで見つけて、あまりの懐かしさに思わず大袋を三つも買っちゃったんです。だから、まだまだ家にいっぱいあるんですよ」


包装に大変ユーモラスなネズミのイラストがプリントされたそのチョコレートは、私が小学生の頃、CMで流れる歌とそれに合わせてコミカルに踊るネズミが大流行した商品だ。

言われてみれば、いつの頃からかCMはおろか店頭でも見なくなっていた。


「ありがとう、三永ちゃん。なんか、元気出た」

「それは良かったです」


懐かしい思い出から元気を貰い、ひとまず両手いっぱいのチョコレートをロッカー内の仕切り板の上に置いてから、一つを取って包装を破る。

口に入れると、歯を立てる前に口内の熱でじんわりと溶け始めた。
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