夜空に見るは灰色の瞳
「……なんか、昔よく食べてたのと微妙に違う気がする。しばらく食べてなかったからそう感じるだけかな」


子供の頃によく食べていたねずみさん印のチョコレートは、もっと硬かったような気がするし、しつこいくらいに甘かったように思う。

でも三永ちゃんから貰ったチョコレートは、柔らかいうえに甘さもほどよい。


「どうなんでしょう。……あっ、でも確か大袋の方に“今の時代に合った、今の時代のチョコレートを”って書いてあった気がします」

「そっか、じゃあやっぱり改良したのかな」


よく見れば、包装にプリントされたネズミのイラストも、昔とは違う気がする。昔より、心なしか可愛くなっている気がする。目がくりくりだ。

食感や味もそうだが、このイラストもまた、今の時代にあった今の時代の――ということなのだろうか。
それでもまあ、懐かしいことに変わりはない。

大量のチョコレートをそのまま鞄に入れるわけにはいかないけれど、入れられるような物がなかったので、ひとまずハンカチでくるんで鞄に入れる。

それから、チョコレートで回復した元気が消失してしまわないうちに、手早く帰り支度を済ませた。
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