夜空に見るは灰色の瞳

「お前……何か今日はいつになくやつれてないか?フラフラしながら店に入ってきた時なんかゾンビが来たのかと思ったぞ。ほれ、茶碗蒸し」

「…………」


ゾンビ呼ばわりされたのは本日二度目だなと思いながら、大路くんがカウンターの向こうから腕を伸ばして茶碗蒸しを置くのを眺める。

大路くんの腕が引っ込んだところで手を伸ばすと、受け皿を掴んで手前に引き寄せ、蓋を開ける。
立ち上る湯気に乗って、出汁の効いた玉子のいい香りがした。この香りだけでも癒される。


「原因はあれか、主任か」

「……以外にないよね。今日はいつにも増して人使いが荒かった」

「そりゃお疲れ」


スプーンでふるふるの茶碗蒸しを掬って、息を吹きかけてから一口。――相変わらずいい腕だ。

昔、まだ一緒に働いていた時、趣味は料理だと言った大路くんの言葉を疑った同僚に、それを証明するためにお弁当を作って来たことがあった。
私もそれを摘まませてもらったのだが、その時から大路くんの料理の腕は確かなものだった。

料理を仕事にするようになってからは、更に腕が上がっている。趣味の領域から、プロの領域になっている。
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