夜空に見るは灰色の瞳
“お疲れ”とカウンターの向こうから出されたお茶を、ムスッとしながら一口飲む。
それから湯呑をしばらく見つめて、何だか物足りないなと顔を上げた。


「……ねえ、大路くん」

「今日はやめとけ」


答えは早かった。というか、まだ何も言っていない。呼びかけただけだ。


「お前、今絶対“ちょっと飲みたいな”って思っただろ。疲れてる時なんていつも以上に酔いやすいんだぞ。だから今日はやめとけ」

「……違うかもしれないじゃない。一応最後まで聞きなさいよ店員でしょ」

「よし、わかった。じゃあ違うなら言ってみろ」

「…………」


違わないので何も言えない。でも、聞けと言った以上何か言わなければ負けた気がして悔しい。


「大路くんは、お客に対する態度がなってないと思う。そういうのってどうなの、店員として。て言うか、大路くんは店長でしょ!責任者でしょ!もっとちゃんとするべきだと思う」

「あーはいはい、悪かったな。言い当てられて何も言えなくて悔しいんだな、そりゃ悪かった」


物凄く腹の立つ言い方だ。
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