夜空に見るは灰色の瞳
「叶井さんが全然帰ってこないので、待っているのも飽きてしまって探しに来たんです。残業かもしれないと思って会社の方も見に行ったんですけど居なかったので、もしかしたらと思ってこっちに来てみたらビンゴでしたね。前にここのお店のことを聞いていて良かったです」


大路くんが、何か言いたげにこちらを見ているのが横目に見えた。
これは、変な勘違いを起こされる前に何か言わなければいけない。


「あのね、大路くん。さっきはビックリして曖昧な言い方しちゃったけど、この人は“ただの”知り合いなの。それ以下ではあっても、それ以上ではないの」


大路くんが、何とも表現の難しい微妙な顔をしている。
それに危機感を感じた私が更に口を開いたところで、一足先に男が


「知り合いとは言っても、頻繁にお家に伺うような仲のいい関係ですよ」


そう言って、ニッコリ笑った。
その言葉と笑顔に、大路くんがギョッとしたように目を見開く。もちろん私も。
< 143 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop