夜空に見るは灰色の瞳
やはり、大路くんの様子がおかしい。
丁寧な言葉遣いではあるけれど、笑顔も浮かべてはいるけれど、何と言っても目が怖い。目は口ほどに物を言うというのは本当だなと、実感させられる。

それに対し、男は困惑した様子で私の方を見てくるが、大路くんの態度に困惑しているのは私だって同じなので、助けを求められても困る。


「……えっと、じゃあ……叶井さん、何がオススメですか?」

「え?」

「オススメです。茶碗蒸しは残念ながら売り切れたようなので、他に何かありますか?」


それは私より、この店の店主である大路くんに訊いた方がいいのではないかと思ったが、すぐに、この空気では無理かと思い直す。


「えっとじゃあ……出汁巻きはまだある?」

「まあ……ある、けど」

「じゃあ、それを一つ。いいよね?」


注文してからの確認にはなってしまったが、男は文句も言わずに頷く。
反対に大路くんは、どこか不満げに、かなり渋々といった感じで出汁巻き玉子の支度を始めた。
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