夜空に見るは灰色の瞳
「“読んで”はいません。“感じた”だけですよ、叶井さん」


心を読まれたのだろうか……と考えたところにこの返事。まさか、この男は本当に本物なのだろうか。

いやでも、全部は顔に出ていなくとも、少しは顔に出ていたかもしれないし、それと話の流れから推測して答えた可能性だってある。

だって、科学が日々発展しているこの現代社会に魔法使いだなんて、いくら何でも……。


「たとえ僕の言うことが信じられなくても、ご自分の目で見たものなら信じられるのではありませんか?」


自分の目で見たもの……、まあ確かに見たと言えば見たが……。


「でも昨日は、残業した後だったから疲れてたし……。それに暗かったから、見間違いという可能性もないわけじゃ……」

「仮に見間違いだとすると、僕がこうしてここに存在している説明はどう付けます?」

「……それは、まあ……おいおい」

「おいおいでは困りますね。今説明を付けるか、ご自分の目で見たものを信じるか、どちらかにしてください」


そんなことを言われたって、じゃあこっちでと気軽に選べるものではないだろう。レストランでメニューを選ぶのとはわけが違うのだ。
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